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2018.10.26
テクノロジー・ビジネス (2016.09.29)から

「医療」「非医療」双方で活用が進むニューロフィードバック・テクノロジー

ニューロフィードバックの新しい技術が開発され、医療面でのさらなる応用が期待されています。医療のみならず「非医療」の面でもニューロフィードバック・テクノロジーは未知の可能性がありそうです。

新しいニューロフィードバックの技術開発
ニューロフィードバックについては、過去にnounowで何度か取り上げてきました(『ニューロフィードバックで認知力は向上するのか?』)が、9月上旬に株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、ブラウン大学認知言語心理学科、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)らの研究で「顔の好みを好き・嫌い両方向に変化させるニューロフィードバック技術を開発した」ことが発表され話題を呼んでいます。
近年モデル動物を用いた研究により、これまで考えられてきた「各脳領域はそれぞれ異なる認知機能に関わる」のではなく、「単一の脳領域がさまざまな認知機能に関わる」ことが明らかになっています。しかし、ヒトでそれを検証しようとしても、脳活動のパターンを測定・操作するアプローチが必要とされ、ヒト脳研究では長年困難とされてきました。
そこで2011年に開発した、人工知能技術とfMRIを駆使した最先端のニューロフィードバック法を用いることで、「脳領域に特定のパターンを誘導した結果、認知がどのように変化するか」を調べることができるようになり、本研究成果に結びついているとのことです。
単一の脳領域に異なる活動パターンを誘導した結果、それぞれ異なる認知機能に変化が起これば、その領域が複数の異なる認知機能に関わることを実証でき、ヒト脳研究においても、単純な機能局在論を超えた重要かつ新しいアプローチが可能になります。
(引用)国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)プレスリリース(9月9日)「顔の好みを好き・嫌い両方向に変化させるニューロフィードバック技術を開発」
どのように好き・嫌いが変化したのか
研究ではまず400枚の顔写真に対する被験者の好み評定を測定し、その後被験者に自分自身の脳(帯状皮質)に好き・嫌いに関係する活動パターンを誘導するニューロフィードバック訓練を3日間実施しました。そして最後に前述の400枚の顔写真に対する好み評定を再度測定し、結果を事前評定と比べることでニューロフィードバック訓練によって顔の好みが変化したかを検討しました。
結果として、ニューロフィードバック訓練中に提示された顔写真に対して、好きな群では有意な上昇が、嫌いな群では有意な低下が見られたということです。また、ニューロフィードバック訓練中に提示されたなかった顔写真にはこれらの変化はなかったことが報告されています。
期待されるニューロフィードバック技術
この研究で明らかになったことは、顔の好き・嫌いという異なる認知機能を誘導できるという発見です。
本研究では、DecNefを用いて帯状皮質の活動パターンを操作することで、顔の好き・嫌いという異なる認知機能を誘導できることを発見しました。従来のヒト脳研究は機能局在論にもとづき、異なる脳領域が別々の認知機能に関わるとしてきました。一方本研究では、単一の脳領域が複数の異なる認知機能に因果的に関わり得ることを明確に示しています。この成果は、DecNefを用いることで、今後ヒト脳研究においても、単純な機能局在論を超えた重要かつ新しい観点にもとづいた実証的研究が可能であることを意味しています。
今後、さらなる医療面での応用が期待されています。
ATRは国内の研究機関・医療機関と連携し、ニューロフィードバック法の医療応用を進めています。強迫性障害、慢性疼痛、自閉症、うつ、心的外傷後ストレス障害などの疾患を対象とし、すでに一部では介入研究が始まり、一定の成果が得られつつあるといいます。これまでの薬物療法や行動療法とは一線を画す新しい治療法としてニューロフィードバックは期待されています。
また、こちらも以前nounowで紹介したのですが(『ニューロフィードバックでモチベーション向上!?』)、オリンピックに出場したバレーボール選手が精神の集中を身につけるためニューロフィードバックを活用したり、サッカーチームのACミランがニューロフィードバックのトレーニングルームを設け選手にトレーニングを課すなど、海外のアスリートがパフォーマンス向上のためにニューロフィードバックを活用することも増えています。
医療・非医療ともにニューロフィードバック技術の活用・さらなる進化が期待されます。
(出典)
Kazuhisa Shibata, Takeo Watanabe, Mitsuo Kawato, Yuka Sasaki: Differential activation patterns in the same brain region led to opposite emotional states. PLoS Biology. DOI:10.1371/journal.pbio.1002546 (2016)

https://www.nounow.jp/technology/2880/

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